高速逐次視覚提示(RSVP)とは、テキスト全文を紙面や画面に並べて配置するのではなく、同一の固定座標上に単語や短いフレーズを1つずつ連続的・高速に映し出す提示手法を指します。元来は1970年代から認知心理学の実験手法として開発されたものであり、視覚刺激に対する人間の知覚特性や短期記憶のメカニズムを解明するために用いられてきました。
この技術がなぜ「高速処理を可能にするのか」、その仕組みと理由は人間の眼球運動の構造にあります。一般的な読書において、人間の目は文字の上を滑らかに移動しているわけではありません。約200ミリ秒から300ミリ秒の「停留(視線を止めて情報を読み取る時間)」と、約20ミリ秒から40ミリ秒の「サッケード(次の単語へ視線を跳躍させる急速眼球運動)」を小刻みに繰り返しています。成人の読書時間のうち、およそ10%から20%の時間は視線を動かすだけの物理的な運動に消費されている計算です。
RSVPは、対象となる文字列を常に網膜の中心窩(解像度が最も高い視野の中心部)へ直接送り込みます。つまり、視線を物理的に動かす運動コストを完全にゼロ化し、視覚入力を理論上の最速ペースまで引き上げるアプローチにほかなりません。