金具屋のもう一つの真骨頂が、館内だけで完結する温泉の圧倒的多様性です。自家源泉を含む4つの源泉を所有し、湯口から湧き出る湯は加水・循環ろ過を一切行わない純度100%の源泉かけ流し。館内には「3つの大浴場」と「5つの無料貸切風呂」、計8つの浴場が点在しています。
ステンドグラスが幻想的な洋風風呂「浪漫風呂」、潜水艦の底のような丸い湯船が特徴的な「鎌倉風呂」、自然石を配した「露天風呂(龍瑞の湯)」といった大浴場に加え、貸切風呂は空いていれば予約不要・鍵をかけるだけで24時間いつでも無料で利用可能です。それぞれ「恵の湯」「子安の湯」「岩窟の湯」など異なる木材や石材で造られており、館内を歩くだけで湯巡りの旅が成立します。
ただし、入浴にあたっては金具屋ならではの明確な注意点があります。渋温泉の源泉は地底深くから高温で自噴しており、「湯口からは源泉100%の熱湯が注がれている」という事実です。金具屋では浴槽の温度管理を水で薄めるのではなく、湯口から注ぐ湯量の微調整のみで行っています。そのため、外気温や直前の入浴状況によっては湯船が高温になっている場合があり、入浴前のかけ湯と湯加減の確認は欠かせません。飛び込みや乱暴な入浴は厳禁であり、湯守の繊細な管理によって維持される名湯を味わう大人のマナーが求められます。
さらに宿泊者には、渋温泉街に点在する「九つの外湯(厄除巡浴外湯めぐり)」を施錠できる巡浴用の専用鍵が貸し出されます。九番湯「大湯」をはじめとする共同浴場を祈願手ぬぐいにスタンプを押しながら巡る文化は、金具屋の館内湯巡りと並ぶ渋温泉の醍醐味です。