二人の出会いは1995年9月、ロンドンのロイヤル・ブロンプトン病院でした。友人の夫が入院していた同病院を公務外で私的に訪れたダイアナ妃は、一心不乱に患者の処置にあたるカーン医師の眼差しに一瞬で心を奪われたと伝えられています。王族としての特権や美貌に一切媚びず、一人の人間として、そして生命を救うプロフェッショナルとして毅然と接する彼の姿勢は、虚飾に満ちた社交界に疲弊していた元妃にとって極めて新鮮でした。
交際は約2年間に及びました。その内容は、王室の歴史でも類を見ないほど徹底した極秘交際でした。ダイアナ妃はブルネットのウィッグ(かつら)を着けて変装し、カーン医師の質素なアパートを訪れて皿洗いやアイロンがけを行い、彼が当直勤務を終えるのを静かに待っていたと、当時の王室執事ポール・バレル氏の手記でも明かされています。
元妃は彼を「ミスター・ワンダフル」と呼び、パキスタンへの移住やイスラム教への改宗、さらには秘密結婚の可能性について側近へ真剣に相談していました。1996年および1997年には、カーン医師のルーツを知るためにパキスタンを非公式に訪問。彼の親族にあたる元首相イムラン・カーン氏とその元妻ジェマイマ・ゴールドスミス氏の元を訪れ、厳格なパキスタン伝統家庭に嫁ぐための助言を求めていた事実は、彼女の愛情の深さを物語っています。