オシドリは東アジア(日本、ロシア極東、中国東部など)に固有の鳥類で、世界的に見ても日本は極めて重要な生息・越冬地域となっています。国内における移動パターンは地域によって異なり、北海道や東北北部では春から夏に子育てを行う「夏鳥」、本州中部以南では一年中見られる「留鳥」または冬に北方から飛来する「冬鳥」として生活しています。
水鳥であるカモの仲間でありながら、オシドリには他の水鳥には見られないユニークな生態があります。その最たるものが「樹上生活への適応」です。オシドリの足の指には鋭く湾曲した爪が生えており、木の枝をしっかりと掴んで高木に止まることができます。
生息環境として選ぶのは、開けた広大な湖ではなく、うっそうとした森林に囲まれた山間の渓流、ダム湖、ため池です。水面に木の枝が覆いかぶさるような薄暗い場所を好み、秋になると大好物のドングリ(コナラやミズナラの実)を求めて水辺から森の奥深くへと入り込みます。
繁殖期になると、キツツキが開けた穴や大木の腐朽によってできた地上5〜10メートル以上の樹洞を見つけて産卵します。孵化したばかりのヒナは、まだ飛べないにもかかわらず、メスの呼び声に応じて高さ数メートルの巣穴から地上や水面へとダイブします。体がふわふわの綿羽に覆われて極めて軽いため、高い木から飛び降りても怪我をすることなく、無事に水辺へと移動してメスについて泳ぎ始めるのです。