近代日本で長く日陰の存在となっていた春画の価値を呼び覚ましたのは、皮肉にも海の向こうの視線でした。19世紀後半のジャポニスム期、モネ、ドガ、ロダン、ピカソといった西洋の巨匠たちは日本から持ち出された春画を熱狂的に収集し、その大胆な構図や卓越したデッサン力に強いインスピレーションを受けました。
再評価の決定打となったのが、2013年にロンドンの大英博物館で開催された大規模な春画展(Shunga: sex and pleasure in Japanese art)です。3か月で約9万人もの来場者を記録し、世界的権威を持つ美術館が春画を「日本が誇る第一級のファインアート」として正当に位置づけたニュースは、日本国内にも大きな衝撃を与えました。
この反響を受け、2015年には東京の永青文庫で日本初となる大規模な春画展が実現しました。事前の懸念を覆して会場には連日長蛇の列ができ、約21万人もの観客が殺到。来場者の過半数を若い女性が占めたことも大きな話題を呼びました。現在では、美術展や学術研究を通じて「江戸の卓越した印刷工芸」「豊かな人間賛歌の表現」として、国内外で揺るぎない評価を確立しています。