主人公の心理描写を解剖する上で外せないのが、庵野秀明監督が施した冷徹な演出アプローチである。当時のアニメ表現において、主人公が性的な罪悪感に打ちのめされる瞬間をここまで露骨に描くことは極めて異例であった。監督は視聴者に対し、ヒーロー像の幻想を徹底的に打ち砕く意図を隠さなかった。
自己防衛の仮面を剥ぎ取られたシンジは、観客自身の「見たくない醜悪な自己」を映し出す鏡となる。彼が自らの行為に恐怖し、即座に発した拒絶の言葉は、完璧な救世主を期待していた観客への挑戦状でもあった。観客を甘やかす逃避行を拒み、痛烈な現実へと引き戻す計算された演出方針がそこには存在する。