華々しいキャリアの裏には、世に広く知られていない徹底した役作りの流儀と独自の哲学が存在する。加瀬はかつて、台本を深く読み込む一方で「現場で相手の芝居を受け取るまで、自分の感情を決めつけない」と語っていた。徹底的な準備と、現場での完全な即興性。この矛盾する二つを高い次元で同居させることが、彼の芝居に生々しいドキュメンタリー性を付与している。
名声や興行収入に惑わされることなく、自身が心から共鳴できる物語と監督だけを追い求めてきた未公開の選択の数々。海外のインディペンデント作品への単身参加や、舞台裏で見せる妥協なきディスカッションなど、彼の表現者としての純度は年々高まっている。世界が彼を称賛し続けるのは、演技という行為に対するこの求道者的な誠実さがあるからだ。