ネット上の解説記事で頻繁に見受けられる致命的な誤解が、「DCモーターは摩耗がなく長寿命」という言説です。この認識は半分正しく、半分は完全な誤りと言わざるを得ません。DCモーターには「ブラシ付き」と「ブラシレス」という2系統の根本的に異なる構造が存在するためです。
昔ながらの模型工作や安価なハンディファンに使われるブラシ付きモーターの構造は、回転軸と一体になった整流子(コミュテータ)に、カーボン製の「ブラシ」を物理的に接触させて通電方向を切り替えます。この接触面は回転するたびに激しい摩擦熱と火花(電気火花)を生み出し、物理的にすり減っていきます。ブラシが摩耗しきればモーターは寿命を迎えるため、耐久時間は数千時間程度に過ぎません。
現在、高機能家電や産業機器で持て囃されているのは、この機械的接点を完全に排除したブラシレスDCモーターの特徴によるものです。ブラシレス方式では、ローター側に強力な永久磁石(ネオジム磁石など)を配置し、ステーター側のコイルへ流す電流をホール素子などのセンサーとインバータ回路で電子的に切り替えます。物理的な摩擦接点が存在しないため、火花や摩耗粉が発生せず、極めてクリーンかつ半永久的な長寿命を実現しています。
また、ACモーター側も技術革新から取り残されているわけではありません。近年の産業界ではインバータ制御と回転速度の技術が高度化しており、交流電源の周波数をインバータで自由に変調させることで、ACモーターでありながら緻密な無段階変速を可能にするシステムが標準化されています。さらに、位置決め精度を追求する分野ではステッピングモーターとの違いも重要です。DCブラシレスモーターが高効率な連続回転を得意とするのに対し、ステッピングモーターはパルス信号1つに対して決まった角度(ステップ角)だけ正確に回転・静止する特性を持ち、3Dプリンターやロボット関節などの高精度位置決めにおいて不可欠な役割を果たしています。