映画やテレビでの活躍にとどまらず、山田五十鈴の真骨頂は舞台経歴にも色濃く表れています。東宝現代劇の中核として『たぬき』『香華』『大奥』など数々の舞台で座長を務め、舞台袖から登場するだけで劇場の空気を一変させる存在感は「舞台の神様」と崇められました。
彼女の芸に対するストイックさを物語る数々の伝説的なエピソードも残されています。舞台前には何時間も前から完璧な準備を整え、台詞だけでなく共演者全員の呼吸や舞台美術の位置関係まで把握して演技に臨む妥協なき姿勢は、演劇界全体の規範となりました。
これらの多大な芸術的貢献が認められ、2000年(平成12年)、彼女は女優として史上初となる文化勲章を受章しました。映画・演劇界を通じて日本の伝統芸能と近現代のリアリズム演劇を融合させ、後世に多大な影響を与え続けたことが受章の決定的な理由です。まさに日本の芸能史における生ける伝説として、その名が公に刻まれた瞬間でした。