「まだ慌てるような時間じゃない」という言葉が飛び出したのは、インターハイ出場権を懸けた神奈川県予選決勝リーグの最終戦、湘北高校対陵南高校の激闘です。全国大会への切符は残り1枠。負けた瞬間に高校バスケ生活が終わるという極限状態のプレッシャーの中、後半終盤にそのドラマは起きました。
主人公・桜木花道の予測不能なファインプレーや流川楓の爆発力、主将・赤木剛憲の気迫に押され、試合の流れは完全に湘北へ傾いていました。立て続けに失点し、点差を広げられた陵南ベンチには重苦しい絶望感が充満。百戦錬磨の陵南高校・田岡茂一監督ですら動揺を隠せず、タイムアウトを取るべきかベンチで激しい焦燥に駆られていました。
コート上のチームメイトたちが完全に浮き足立ち、視野狭窄に陥っていたまさにその瞬間、両手をポンと叩いて微笑みながら仲間たちに声をかけたのが仙道彰でした。焦り狂う周囲とは対照的な、どこまでも穏やかで自信に満ちたその一言は、パニック状態だった陵南プレイヤーたちの頭を瞬時に冷やし、チームを再び一つに束ね直す決定打となったのです。