健康な成人であれば、リステリア菌を微量に摂取しても無症状か軽度の胃腸炎で済むケースがほとんどです。しかし、妊娠中の女性においては状況が一変します。妊娠期は胎児を異物として攻撃しないよう母体の細胞性免疫が自然に抑制されるため、妊婦の感染確率は健常成人の約17〜20倍に達すると報告されています。
最も警戒すべきは、母体から胎児への垂直感染です。リステリア菌は血管の内皮細胞や胎盤関門を通過する特異な能力を備えており、母体の血液を介して子宮内感染を引き起こします。リステリア菌の胎児への影響としては、妊娠初期から中期における流産、後期における早産や死産、出生後の新生児敗血症や化膿性髄膜炎などが挙げられます。
厚生労働省のリステリアに関する注意喚起でも、国内の年間発症数は数十例程度と極めて稀であるものの、発症した場合の胎児・新生児の予後が重篤になりやすい点が強調されています。単なる胃腸の不調と軽視できない理由がここにあります。