ネット上の情報や一部のライト層の間で散見される最大の誤解が、「マギー・スミスは『ハリー・ポッター』や『天使にラブ・ソングを…』でブレイクした、遅咲きの老け役女優である」という認識です。しかし、これは演劇史および映画史に照らし合わせれば明らかな誤りです。
実際には、彼女は20代半ばにして英国最高峰の演劇界を率いた巨匠ローレンス・オリヴィエに才能を見初められ、ナショナル・シアターの創設メンバーとして抜擢されたエリート中のエリートでした。オリヴィエをして「彼女ほど舞台上で恐ろしいほどのタイミング感覚を持つ女優はいない」と言わしめ、当時の英国舞台界を席巻していたのです。30代ですでにアカデミー主演女優賞を獲得し、1990年には英国王室から大英帝国勲章(DBE)を授与され「デイム(Dame)」の称号を得ています。
ハリウッドの大作エンターテインメントに登場した時期が1990年代以降だったため、世界的な商業映画市場での露出が晩年に偏って見えたに過ぎません。若い頃からすでに英米の演劇界・映画界の頂点に立っていたというバックボーンを知ることで、彼女が演じるマクゴナガル先生やバイオレット夫人の言葉ひとつひとつに込められた「圧倒的な重み」の理由がより鮮明に理解できます。