「オールシーズンの喪服を持っているから、夏もそれを着回せばいい」と考えがちですが、ここに大きな落とし穴があります。オールシーズン用の喪服は秋・冬・春の3シーズンを主眼に置いた中肉のポリエステル生地で作られており、総裏地仕立てが一般的です。30度を超える屋外で着用すると熱が内部にこもり、数分でサウナ状態に陥ります。
一方、夏用ブラックフォーマル(盛夏用喪服)は、見た目の重厚感を損なうことなく通気性を極限まで高める工夫が施されています。
- 織り組織と通気性:夏用は「からみ織り(絽・紗の技術を応用した織物)」や「強撚糸(きょうねんし)を使用したジョーゼット」が使われ、風が通り抜ける構造になっています。冬用に比べて約2〜3倍の通気性を誇ります。
- 裏地と仕立て:夏用ジャケットは背中の裏地を省いた「背抜き仕立て」、ワンピースは身頃のみに吸汗性の高い薄手裏地を配し、袖部分は裏地なしの単衣(ひとえ)仕立てになっているのが特徴です。
- 黒の濃度(濃染加工):安価な夏物ブラックは日差しの下でグレーがかって見えることがありますが、百貨店やフォーマル専門店が扱う夏用喪服は、光の乱反射を防ぐ特殊な濃染加工によって「漆黒」を保ちます。
現在人気を集めているのが、ジャケットを羽織っているように見える「前開きファスナー仕様のトリックワンピース(フェイクレイヤード)」です。1枚着るだけで「ジャケットをきちんと着用している」視覚効果を生み出しながら、構造的には薄手の五分袖・七分袖ワンピースであるため、驚くほど涼しく過ごせます。