物語のクライマックスにおいて、主人公スザンナ(ウィノナ・ライダー)の内面に決定的な転換点をもたらすのは、退院したはずのデイジー(ブリタニー・マーフィ)が迎える壮絶な悲劇です。精神科病院「クレイモア」を脱走したスザンナとリサ(アンジェリーナ・ジョリー)はデイジーの新居に転がり込みますが、そこでリサは、デイジーが父親から受けている性的虐待と歪んだ共依存関係を容赦ない言葉で暴き立てます。翌朝、追い詰められたデイジーは自室で首を吊って自ら命を絶ち、その遺体を前に平然と金を奪うリサの姿に、スザンナは底知れぬ戦慄を覚えます。
この事件を契機に病院へ戻ったスザンナは、自らの感情や周囲の観察記録を手記に書き留める作業を通じて、少しずつ客観的な自己認識を取り戻していきます。物語の最終幕、病院の薄暗い地下通路でスザンナの日記を奪い、仲間たちの前で朗読して嘲笑しようとするリサに対し、スザンナは感情を爆発させるのではなく、冷徹な事実を突きつけます。「あなたは本当は自由なんかじゃない。ここに閉じこもって、周囲を支配することでしか生きられない死人よ」という宣告でした。
この地下通路の対峙こそ、本作が描く最大のテーマです。反体制的で強烈なカリスマに見えたリサが、実は「病棟という閉じた檻の中でしか存在価値を見出せない最も不自由な人間」であったことを見抜いた瞬間、スザンナは他者の支配から精神的に脱却しました。ラストシーンで退院を迎えるスザンナが見せる晴れやかな表情は、病気の完全な治癒を意味するのではなく、「不完全で矛盾に満ちた自分自身を受け入れ、社会との境界線を引いて生きていく覚悟」の獲得を意味しています。