世間ではなぜここまで「保険証の色」に関心が集まったのでしょうか。大手総合病院の医事課で15年以上の受付キャリアを持つ担当者は、次のように現場の実感を語ります。
「受付の立場から申し上げると、保険証の色を見て『この患者さんは高所得だ』などと考えるスタッフは皆無です。私たちが確認しているのは、有効期限が切れていないか、負担割合は何割か、そして記号・番号の打ち間違いがないかという実務情報だけです。ただ、患者さん同士が待合室で他人の保険証をチラッと見て、『あの方の保険証は金色の枠が入っていて格好いい』といった感想を口にされる場面には遭遇したことがあります」
ネット掲示板やSNSの声を集約・分析すると、保険証の色に関する話題の多くは「コンプレックス」や「好奇心」から発生していることが浮き彫りになります。
- 「バイト先の同僚と身分証を見せ合った際、自分だけ国保の派手なピンク色で、相手は落ち着いた水色の社保。なんとなく気まずかった」(20代・フリーター男性)
- 「合コンで身分証を出す流れになったとき、共済組合の保険証を持っている男性が『公務員アピール』として使っていた」(20代・会社員女性)
- 「毎年役所から送られてくる国保の保険証の色が毒々しい蛍光色で、財布の中で浮いて恥ずかしい」(30代・個人事業主女性)
医療現場において色は何の意味も持たない実務の識別に過ぎない一方、一般市民の間では「所属属性の可視化ツール」として無意識に受容されてきたギャップが観察されます。