約10ヶ月に及んだ『べっぴんさん』の撮影は、芳根にとって試練と成長の連続だった。当時19歳だった彼女は、大阪での一人暮らしを送りながら極限状態の中で撮影に臨んでいた。
劇中で描かれた裁縫や刺繍の手さばきは、すべて猛練習の成果である。現場では常に針と糸を持ち歩き、手に傷を作りながらもプロの手つきを体得したという。妥協を許さないその姿勢は、共演したベテラン俳優陣からも絶賛された。
また、セリフが少ない場面における「目の演技」や「間合い」の取り方は、監督との綿密な話し合いから生まれた。単なる悲劇のヒロインではなく、内に秘めた強さとしなやかさを表現するために、現場では連日遅くまでミーティングが重ねられていたという知られざる裏話も残されている。