宿場町の歴史を語る上で欠かせないのが、街道の要所に配置された「関所」の存在です。江戸幕府は東海道の箱根・新居、中山道の碓氷・福島などに厳重な関所を設置し、治安維持と反乱防止に目を光らせました。
関所の最重要任務は、俗に「入鉄砲に出女(いりでっぽうにでおんな)」と称された取り締まりです。江戸に武器が持ち込まれること(入鉄砲)と、人質として江戸に住まわせていた諸大名の妻子が領国へ逃亡すること(出女)を徹底的に監視しました。通行手形を持たない旅人は厳しく尋問され、関所破りは死罪を含む重罰に処されました。街道を行く旅人にとって、関所を無事に通過した後に迎える宿場町の灯りは、極度の緊張から解放される歓喜の場所でもあったのです。
そうした過酷な旅路を支え、宿場ごとに発展したのが独自の郷土グルメです。現代も受け継がれる名物には、旅人の体調を気遣い、土地の風土を生かした知恵が詰まっています。
- 大内宿の「高遠そば(ねぎそば)」:福島県大内宿を象徴する名物。箸の代わりに一本の生長ねぎを使い、器用に蕎麦をすくいながら薬味としてねぎをかじる独特のスタイル。辛味大根の絞り汁で食べる風味豊かな蕎麦は、旅人の疲れた胃腸を整える役割を果たしました。
- 木曽路の「五平餅」と「すんき漬け」:うるち米を潰して串に刺し、胡桃やエゴマ、味噌を合わせた特製ダレで香ばしく焼き上げる五平餅は、山間部の貴重なエネルギー源でした。また、植物性乳酸菌で発酵させた無塩のすんき漬けは、冬の保存食として街道の宿を温めました。
- 東海道・鞠子宿の「とろろ汁」:歌川広重の浮世絵にも描かれた名物。山芋を出汁と味噌で伸ばした滋養強壮食であり、険しい宇津ノ谷峠を越える旅人たちの足腰を支え続けました。