名優たちの演技論を語る上で欠かせないのが、佐藤浩市と堤真一という二人の巨頭だ。佐藤浩市が魅せるのは、いわば「組織と個人の狭間で軋む男の美学」。背広の着こなしから煙草の火を消す仕草に至るまで、警察組織の重圧を背負い続けた人間の疲労感とプライドが見事に同居する。映画やスペシャルドラマで彼が見せた指揮官としての葛藤劇は、今なお日本の刑事ものの金字塔として語り継がれている。
一方の堤真一は、卓越した緩急で観客の感情を揺さぶる。時に冷徹なエリート警察官僚として捜査本部を統率し、時にルール無用の型破りな捜査官として犯人を追い詰める。台詞の間や視線の微細な動きだけで緊迫感を生み出す堤の演技は、本格的な警察サスペンスに不可欠な緊張感の源泉だ。彼らが画面に立つだけで、フィクションがドキュメンタリーのような生々しさを帯び始める。