煮付けの美しさと味わいを左右するもう一つの要素が、徹底した下ごしらえだ。プロが必ず行うプロセスが「霜降り(湯通し)」である。切り身にさっと80度から90度程度のお湯を回しかけ、表面がうっすら白くなった瞬間に氷水へ移す。ここで血合いや表面の滑りを丁寧に優しく取り除く。このひと手間で魚特有の臭みが一掃され、澄んだ旨味だけが煮汁へと凝縮していく。
さらに、皮に「十字の切れ目」を浅く入れる工夫も欠かせない。皮が破れるのを防ぎつつ、短い加熱時間でも中心まで味を染み込ませる職人技だ。煮ている最中は落とし蓋を必ず使用し、強めの火加減で一気に炊き上げる。ダラダラと長時間をかけて煮込むのは身を硬くし、煮崩れを引き起こす原因となるため、8分から10分程度で手早く仕上げるのが成功への近道だ。