日本の生殖医療は、日本産科婦人科学会が策定する自主指針と、患者側の切実なニーズとの間で常に軋轢を生んできた。体外受精や顕微授精技術の飛躍的な進歩に伴い、不妊治療は一医療行為の域を超え、巨大な生殖医療産業へと急成長を遂げる。民間クリニック間での集客競争や海外への代理母依頼ビジネスの台頭など、市場化が進むにつれて倫理的な一線をどこに引くべきかが問われ始めた。
治療費の高額さや成功率の格差、提供精子・卵子による親子関係の法的曖昧さなど、課題は山積みだった。技術が先行し法的整備が追いつかない「空白の30年」の中で、現場の医師たちは自己の倫理観に基づいた決断を迫られ続けていたのだ。