農業現場での繊細な役割とは対照的に、工業界におけるエチレンは「基礎化学品の王様」として君臨する。プラスチック、合成ゴム、合成繊維、塗料に至るまで、身の回りのあらゆる工業製品の出発点だ。日本の石油化学産業において、その生産能力は国の製造業競争力を測る絶対的な指標とされてきた。
原油を蒸留して得られるナフサを高温で熱分解する設備「ナフサクラッカー(エチレンプラント)」から、年間数百万トンものエチレンが生み出される。一般社団法人石油化学工業協会の集計データを見ても、エチレンの稼働率は長年、国内製造業の景気動向を映す先行指標として注視されてきた。しかし近年、海外メガプラントの台頭や内需の縮小を受け、国内の生産体制はかつてない効率化を迫られている。