ローズの感情的な反発とは対照的に、米国の野球データ分析コミュニティや主要メディアの論調は極めて冷静、かつイチローへの敬意に満ちていました。
当時、ESPNのシニアライターであるジェイソン・スタークをはじめとする複数の名物記者が展開したのは、「仮にイチローが21歳からメジャーでプレーしていたらどうなっていたか」というセイバーメトリクスに基づく逆算シミュレーションです。
イチローはMLBデビュー年の2001年から10年連続で200安打以上を記録し、その間の年間平均安打数は224本を超えています。日本のプロ野球はシーズン130〜135試合制(当時)であり、メジャーの162試合制よりも約30試合少なかった点も重要です。もし渡米が6年早ければ、同等のペースで少なくとも1,200本前後の安打が加算されていた計算になり、ローズの4,256本をMLB単独の成績だけで大幅に更新し、4,500本前後に達していた可能性が極めて高いと結論付けられました。
現地中継のアナウンサーや米国の野球フォーラムでも、ファンの声は明確でした。「ローズの記録はMLB公式の金字塔だが、バッターとしての純粋なヒット製造能力においてイチローが史上最高であることに疑いの余地はない」という見解が、一般層にも浸透していったのです。
何より記録達成時の記者会見で、ピート・ローズへの敬意を問われたイチロー自身の言葉が米国のファンを唸らせました。
「(ローズ氏に)怒られたいですよね。『何やってんだ、あんなやつ』って言われたら僕としては嬉しいですよ。記録自体は日米合算なので、ローズがどうこう言うのも理解できます。ただ、ここに集まってくれたチームメイトやファンの温かい反応に触れられたこと、それが僕にとって一番の価値です」
感情的にならず、相手の立場を尊重しながらユーモアで返すイチローの立ち振る舞いは、現地メディアからも「真のベースボール・アンバサダー」と絶賛されました。