吉田カバンの原点は、創業者である吉田吉蔵(よしだ きちぞう/1906–1994)が東京・神田須田町に構えた「吉田鞄製作所」にあります。吉蔵は関東大震災の教訓から「荷物を運ぶ道具としての鞄」の価値を痛感し、丈夫で使いやすい鞄づくりに生涯を捧げました。この吉蔵の理念を支え、事業を拡大していったのが妻・千佳と息子たちによる創業家ファミリーです。
吉田吉蔵の家系図を辿ると、事業の根幹を支えた2人の息子の存在が際立ちます。堅実な経営手腕で組織を近代企業へと発展させた長男・吉田滋(よしだ しげる)と、卓越したデザインセンスで数々のメガヒットを生み出した三男・吉田克幸(よしだ かつゆき)です。ビジネスとクリエイティブという両輪を兄弟で分担したことが、吉田カバンの黄金期を築く原動力となりました。
創業家の家族構成は、単なる同族経営にとどまらず、日本の鞄業界において稀に見る「職人とプロデューサーの理想的な共創関係」を体現していました。吉蔵が遺した「一針入魂」の社訓は、息子たち、そしてその次の世代へと脈々と受け継がれています。