1974年に放送が開始された明治スナック「カール」CMシリーズの記念すべき第1作。画面の中央で元気に跳ね回っていたのは、黄色い麦わら帽子に赤い服を着た「カール坊や」だった。当時の企画意図として、子供たちの共感を呼ぶポップな主役として生み出されたのが彼である。
一方、現在誰もが知るカールおじさんは、あくまで日本ののどかな農村風景を演出するための「背景キャラクター」に過ぎなかった。いわば通行人Aのようなポジションだ。しかし、試写や実際の放映が始まると事態は一変する。画面の端で泥臭くも愛嬌たっぷりに動くおじさんの存在感が、視聴者や制作陣の予想を遥かに超えて圧倒的なインパクトを与えてしまったのだ。
株式会社明治のマーケティング戦略としても、この視聴者のリアクションを見逃す手はなかった。回を重ねるごとに画面内での露出比率は逆転。いつしかカール坊やは主役の座をおじさんに譲り、脇へとスライドしていった。まさに広告史に残る鮮やかな「主役の下剋上」である。