試合において「いまのは入ったのではないか」と観客席がどよめいても、3人の審判員が旗を上げない場面は頻繁に見られます。剣道において、ただ相手の防具に竹刀が触れたり、大きな打突音が響いたりしただけでは得点になりません。
全日本剣道連盟の「剣道試合・審判規則第12条」には、有効打突の判定基準が明確に定められています。それは「充実した気勢、適正な姿勢をもって、竹刀の打突部で打突部位を刃筋正しく打突し、残心あるもの」という極めて高度な条件の一致です。
具体的には、以下の要素がすべて同時に満たされていなければ、審判の旗が挙がることはありません。
- 気剣体の一致:打突の瞬間に気迫の発声(気)、竹刀の有効打突部(剣)、踏み込み足と腰の体重移動(体)が完全に合致していること。
- 打突部と打突部位:竹刀の先革から中結までの「物打(ものうち)」と呼ばれる特定の部分で、相手の定められた防具部位を捉えていること。
- 刃筋(はすじ)の正しさ:竹刀の弦(つる)の反対側を「刃」と見なし、本物の日本刀で斬りつける角度で正しく振り下ろされていること。平打ち(竹刀の側面で叩くこと)は無効打突となります。
- 残心(ざんしん):打突直後、相手の反撃に備えて油断なく油断のない構えと精神的警戒を保っていること。ガッツポーズや過度な歓喜のアピールを行った場合、一本が取り消される厳格なルールが存在します。