足元を支えるコートや勝敗を決するレギュレーションにも、競技の歴史的背景を映す明白な相違点があります。
一見すると同じ広さに見えるコートですが、決定的に異なるのがネットの高さです。硬式テニスのネットは両端(ポスト部)が1.07m、中央部分がストラップで引き下げられて0.914m(3フィート)の逆アーチを描きます。そのため、センターを通すクロスショットは低く速い球が通りやすく、戦術の要となります。一方、軟式テニスのネットは中央を引き下げず、全面にわたって1.07m均一の高さを維持します。軟式ではセンターを通してもネットが高いため、硬式以上に山なりの弾道軌道制御が求められます。
得点システムの数え方も異なります。硬式テニスは国際的なテニス規約に則り、「ラブ(0)」「15(フィフティーン)」「30(サーティー)」「40(フォーティー)」と数え、4点先取で1ゲームを獲得、6ゲーム先取で1セットとするセットマッチが基本です。これに対し、日本発祥の歴史を持つ軟式テニスでは、ポイントを「ワン」「ツー」「スリー」「ゲーム」とシンプルにカウントし、原則として4ポイント先取で1ゲーム、4ゲームまたは5ゲーム先取で試合が決着します。軟式は試合展開のテンポが非常に速く、序盤の数ポイントの失点が瞬時に敗北へ直結する極限の集中力が要求されます。
試合形式の主流も異なります。硬式テニスはシングルスとダブルスが同等の重みで発展してきたのに対し、軟式テニスは歴史的にダブルス中心の競技文化を築いてきました。後衛がラリーでチャンスを作り、前衛が神がかり的なポジショニングとポーチボレーで仕留める「雁行陣(がんこうじん)」のフォーメーション戦術は、軟式ならではの高度な芸術性を誇ります。