個人事業主が家族への給与を経費化する際、真っ先に直面するのが「具体的にいくら支給するのが最も手元にお金を残せるのか」という疑問です。ネット上では「年間103万円以下に抑えるのが正解」という言説が目立ちますが、これは事業主の所得規模によって正解が大きく異なります。
給与設定において最も警戒すべき指標が「専従者給与 月8万8千円 源泉徴収の壁」です。専従者の月額給与が8万8,000円未満(年額105万6,000円未満)であり、扶養控除等申告書を提出している場合、毎月の源泉徴収税額は0円になります。さらに年間給与所得が103万円以下(給与所得控除55万円+基礎控除48万円)であれば専従者本人に所得税が一切かからず、事業主側の所得控除手続きも極めてシンプルに済みます。事業所得が400万〜500万円前後の事業主であれば、この月額8万円(年間96万円程度)の設定が税理士の手間や本人の税負担を抑える上で堅実な選択肢です。
一方で、事業所得が800万円超から1,000万円以上に達する高所得者の場合、判断基準は一変します。事業主の課税所得にかかる所得税・住民税の限界税率が33%〜43%以上に達している状況では、専従者に月額15万〜25万円(年間180万〜300万円)を支給した方が圧倒的に有利です。専従者側に所得税や住民税が発生したとしても、専従者の適用税率は最低水準の5%〜10%台に収まるため、事業主の高い税率を家族の低い税率へ分散させることで、世帯全体の手元資金は数十万円から100万円超も跳ね上がります。
なお、白色申告にも「白色専従者控除」が存在しますが、こちらは配偶者で上限86万円、その他の親族で上限50万円の定額控除に制限されています。これに対し、青色事業専従者給与は「仕事内容に見合った適正額」であれば法律上の上限額が定められておらず、全額を経費算入できる点が決定的な違いです。