愛着のあるぬいぐるみの背中やお腹がほつれた際、多くの人がコの字縫いに挑戦するが、コミュニティサイトやSNSでは「綿を巻き込んで糸が引き抜けない」「中綿の反発で縫い目が開いてしまう」という悲痛な声が頻繁に投稿されている。
全国からぬいぐるみの修復依頼を受ける専門クリーニング・リペア工房の現場スタッフに、その実態と解決法を尋ねた。
「ぬいぐるみの修復で失敗する最大の原因は、中綿の反発力を甘く見ていることです。綿がパンパンに詰まった状態で縫おうとすると、針先にポリエステル綿が引っかかり、糸を引いた瞬間に綿が布の外側に引っ張り出されてしまいます。これを防ぐには、作業前に開口部付近の綿を指でぐっと奥へ押し込み、マチ針で仮止めしておくことが鉄則です」(リペア担当者)
さらに、耐久性を担保するためには糸の選定が決定打となる。一般的な薄地用木綿糸(60番手)の1本取りでは、子どもが引っ張ったり抱きしめたりした際の圧力(約3〜5kgfの引張力)に耐えきれず、数か月で糸が切れてしまう事例が後を絶たない。現場では、ポリエステル100%のシャッペスパン手縫い糸、あるいはミシン糸の30番〜50番手を使い、2本取りで縫い進める手法が標準化されている。化学繊維特有の滑りの良さが、糸を引く際のスムーズさを生み、かつ破断耐性を飛躍的に高めるのだ。