日本国内で目にする機会の多いオオカマキリ、チョウセンカマキリ、ハラビロカマキリなどの主要種において、カマキリの卵の孵化時期は概ね4月中旬から6月上旬にかけて集中します。前年の秋に産み付けられたスポンジ状の「卵嚢(らんのう)」は、冬の厳しい寒冷期を乗り越え、平均気温が20℃前後で安定する初夏を迎えると一斉に目覚めます。ひとつの卵嚢からは、およそ100匹から300匹もの赤ちゃん(初齢幼虫)が糸を引くように次々と這い出してくるのが特徴です。
この時期に多発するのが、カマキリの赤ちゃんが家の中で大量発生してしまうトラブルです。「秋に子どもが拾ってきた小枝を部屋に置いていた」「冬越しのために室内に取り込んだ植木鉢に卵嚢が付着していた」といった原因により、暖房の影響で野外よりも1ヶ月近く早い2月〜3月に孵化してしまう事例が毎年のように報告されています。密閉された室内で数百匹が散乱するとパニックに陥りがちですが、室内に放置すれば数日で全滅してしまうため、速やかな保護や屋外への移動が求められます。
厳しい現実として、自然界におけるカマキリの赤ちゃんの生存率はわずか1%から3%程度にすぎません。鳥類、クモ、アシナガバチ、アリといった無数の天敵に狙われるだけでなく、気候の急変や餌不足によって成虫になれるのは1〜2匹という計算になります。私たちが手元で飼育する場合でも、この自然の淘汰圧を理解し、人工的な保護環境下でいかに死因を排除できるかが成否を分けます。