姉と大喧嘩をして泣きじゃくった後、メイはなぜ一人で遠く離れた七国山病院へ向かってしまったのでしょうか。その理由は、近所のおばあちゃんが放った一言にあります。
「おばあちゃんの畑で採れた野菜をたくさん食べれば、お母さんの病気もすぐに良くなるよ」という言葉を、メイは一言一句疑わずに信じていました。メイが抱きかかえていたトウモロコシ(メイの発音では「とうもころし」)は、彼女にとって単なる野菜ではなく、「お母さんの命を救い、退院を早めてくれる魔法の薬」そのものだったのです。
松郷から七国山病院までは、大人の足でも徒歩で約3時間(約10km以上)かかる長距離です。4歳児の歩幅や空間認識能力では到底たどり着けない距離ですが、メイを突き動かしたのは「お母さんに元気になってほしい」「自分が届ければ家族みんながまた笑顔になれる」という純真無垢な思いでした。迷子という行動は、大人の目線で見れば軽率なトラブルですが、メイの精神世界においては精一杯の家族愛の表現だったといえます。