事件の発端は2010年5月、インディアナ州に住むマイケル・バーネットとクリスティン・バーネット夫妻が、ウクライナ出身の少女ナタリア・グレースを緊急養子縁組で引き取ったことでした。ナタリアは先天性の骨疾患である脊椎骨端異形成症(SEDc)を患っており、低身長や歩行困難といった重い身体的ハンディキャップを抱えていました。
引き取りから間もなく、バーネット夫妻は周囲に対して「ナタリアは子どもではない」という不穏な主張を展開し始めます。「夜中に包丁を持って寝室の前に立っていた」「コーヒーに漂白剤を混入させて殺害しようとした」「すでに大人の歯が生え揃い、陰毛も生えていた」など、その告発内容は過激さを増していきました。
2009年に公開された孤児ホラー映画『エスター』(原題:Orphan)のプロット——発育不全の成人女性が子どものふりをして養子に入り、一家を恐怖に陥れる——とあまりに酷似していたことから、メディア各社やネットコミュニティは彼女を「リアルエスター」と呼び、怪奇事件として大きく報じることとなりました。しかし、この映画との類似性こそが、後に世論をミスリードする最大の引き金となっていきます。