「増えないのであれば、目障りだから抜いても構わないのではないか」と考えるのは極めて危険だ。皮膚科専門医が口を揃えて白髪の抜去を制止するのは、増えるか否かという問題ではなく、頭皮組織への取り返しのつかない破壊行為となるためだ。無理に引き抜くことで生じる3大リスクを直視しなければならない。
1. 毛根への深刻なダメージと毛嚢炎(もうのうえん)リスク
毛髪は毛包の奥深くにある毛乳頭や毛母細胞と強固に結合している。これを力任せに引き抜くと、毛包内部の上皮組織が物理的に引きちぎられ、微小な内出血や傷が発生する。頭皮には無数の常在菌が存在するため、傷ついた毛穴から黄色ブドウ球菌などが侵入すると、赤く腫れ上がり膿を伴う「毛嚢炎」を発症する。毛嚢炎が悪化すると強い痛みを伴い、皮膚科での抗生物質治療が必要になるケースも珍しくない。
2. 色素幹細胞の破壊と「白髪を抜くと生えなくなる噂」の現実化
「白髪を抜いているとハゲる」という噂は、残念ながら都市伝説ではなく医学的な現実である。毛根への暴力的な牽引が繰り返されると、バルジ領域に宿る色素幹細胞や毛母細胞が線維化し、組織が瘢痕(はんこん)化して完全に消失してしまう。こうなると毛周期(ヘアサイクル)自体が途絶え、白髪どころか黒髪も含めてその毛穴から二度と毛が生えなくなる「牽引性脱毛」や局所的な菲薄化を招く。
3. 頭皮環境の悪化と毛穴トラブルによる「うねり毛・縮れ毛」
抜去のダメージによって毛包が変形して治癒すると、次に生えてくる毛髪の断面がいびつになり、極端なうねりや縮れを持った毛が生えてくる。また、毛穴の出口が傷の修復過程で塞がれてしまうと、伸びてきた毛が皮膚の下に閉じ込められる「埋没毛」となり、慢性的ないぼ状のしこりや色素沈着の原因となる。