奇跡の復活は、決して感情論だけで達成されたものではありません。陣営が前年の手痛い失敗を徹底的に分析し、緻密な戦略を練り上げた結果でした。ここで、トウカイテイオーが11着と大敗した1992年有馬記念と、歴史的勝利を収めた1993年有馬記念のデータを比較検証します。
1992年有馬記念におけるトウカイテイオーの敗因は、過密日程と心身のコンディション悪化でした。前走のジャパンカップで世界各国の強豪を相手に極限の激走を繰り広げた代償として、馬体には重度の疲労が残り、後肢の筋肉痛(トモの疲労)を発症していました。さらにゲート内で立ち上がり腰を強打するトラブルも重なり、実力を発揮できる状態ではなかったのです。
対照的に1993年は、疲労が完全に抜けきった状態で臨むことができました。さらにトウカイテイオー有馬記念の勝因分析において決定打となったのが、田原騎手によるビワハヤヒデへの徹底的なマークでした。1番人気のビワハヤヒデ(岡部幸雄騎手)は菊花賞を圧勝し、並外れた安定感を誇る現役最強馬。田原騎手はビワハヤヒデの直後につけ、相手が動くのを待ってからスパートをかける「後出しジャンケン」の競馬を完遂しました。中山の短い直線、残り100mでビワハヤヒデを交わし半馬身差で競り勝った着順結果は、天才の戦術眼とテイオーの勝負根性が噛み合った結果だったと言えます。