望月氏の名を世間に決定的に知らしめたのは、首相官邸における菅義偉内閣官房長官(当時)への執拗な質問攻防でした。加計学園・森友学園問題を巡る会見で、1回の会見につき20回を超える連続質問を浴びせ、官邸報道室から「事実誤認に基づく質問」「内規違反」として厳重注意の申し入れを受けた事例は、今なお政治部記者と社会部記者の間でも語り草となっています。
なぜ彼女は、ときに周囲を困惑させるほどの追及を繰り返すのでしょうか。その「発言の理由」の根底には、日本のメディア空間に根強く残る「アクセスジャーナリズム(記者クラブの談合・忖度構造)」への強い反発があります。公認された質問リストに沿って当たり障りのないやり取りを交わす予定調和に対し、「国民が本当に知りたい核心に踏み込んでいない」という強い苛立ちが彼女を突き動かしているのです。
しかし、そのアプローチはしばしば両刃の剣となります。2023年に世間の耳目を集めた旧ジャニーズ事務所(現SMILE-UP.)の記者会見では、指名されていない状態での挙手・不規則発言や強い語気での問い詰めが「司会制止の無視」「会場の秩序崩壊を招いた」として激しい批判にさらされました。その一方で、その執拗な追求が引き金となって「NG記者リスト」の存在が表面化するなど、巨大な隠蔽体質を暴き出す契機となったことも動かしがたい事実です。この「ルール逸脱と真相究明の功罪」こそが、彼女への評価が真っ二つに割れる構造的な理由です。