織田裕二が主演を務めた膨大なフィルモグラフィのなかで、「歴代最高の名作はどれか」という議論は、ファンの間でも世代によって意見が二分されます。純粋な世帯視聴率のピークという観点で語るならば、1991年放送のフジテレビ系月9ドラマ『東京ラブストーリー』が不動の頂点に君臨します。最終回で記録した32.3%(ビデオリサーチ調べ・関東地区)は、「月曜の夜に街からOLが消えた」と社会現象化し、優柔不断ながらも愛すべき青年「カンチ」こと永尾完治の苦悩は、バブル末期の若者の心を鷲づかみにしました。
しかし、「織田裕二という役者の代名詞」であり、エンターテインメントとしての支持の広がりと熱量の深さで選ぶならば、1997年に幕を開けた『踊る大捜査線』シリーズを凌駕する作品は存在しません。連続ドラマ放送時の平均視聴率は18.2%と、当時のフジテレビドラマとしては突出した数字ではなかったものの、従来の刑事ドラマにあった「発砲」や「派手なカーチェイス」を排除し、警察組織内の官僚制や縦割り行政のリアルを描いたプロットが口コミで爆発的な支持を獲得しました。
「事件は会議室で起きてるんじゃない。現場で起きてるんだ!」という青島俊作の名台詞は、中間管理職や組織の理不尽に抗う日本中のビジネスパーソンの胸を打ちました。後の劇場版第2作『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003年)が打ち立てた興行収入173.5億円・観客動員数1260万人という記録は、2026年を迎えた現在も実写日本映画の歴代最高峰として破られていません。数字の『東ラブ』、熱狂とカルチャーの『踊る』――この2作こそが、織田裕二の役者人生における決定的な双璧です。