ファッション史を振り返る上で、「西野カナのカンカン帽」は単なる一過性のトレンドアイテムにとどまらない、極めて象徴的な文化現象でした。流行の震源地となったのは2010年前後。「会いたくて 会いたくて」や「Esperanza」などの大ヒットシングルを連発していた時期です。
それまでのギャルカルチャーといえば、渋谷109を中心とした強めのメイクや肌見せ、露出度の高いグラマラスなスタイルが主流でした。しかし西野カナの登場によって、ゆる巻きの明るいヘアカラーにドーリーなメイク、そしてふんわりとしたスカートやダンガリーシャツを合わせる「甘ギャル(ガーリーギャル)」という新たな潮流が一気にメインストリームへ躍り出たのです。そのスタイルの頂点に君臨したのが、まさに浅めにちょこんと頭に乗せるカンカン帽でした。
アパレル業界の販売動向データや当時の原宿・渋谷における定点観測記録を振り返ると、2010年夏のレディースハット市場におけるカンカン帽のシェアは前年比で300%以上の急伸を記録したショップが続出。雑誌『Popteen』『Ray』『ViVi』などの表紙や特集を西野カナが飾り、彼女が身につけたアイテムが即日完売する「カナやん買い」が日常風景となっていました。従来のトップダウン型コレクションブランドではなく、等身大の彼女がメディアや音楽番組で見せたリアルな可愛さこそが、全国の女性たちを突き動かした最大の起爆剤だったのです。