『ONE PIECE』という壮大な物語において、海軍は単なる「主人公の敵組織(悪)」としては描かれません。彼らはそれぞれが異なる生い立ちや信念に根ざした「正義」を背負っており、そのイデオロギーの衝突こそが海軍パートの醍醐味です。
なぜ尾田先生は海軍のトップに昭和の名優たちを配置したのでしょうか。映画社会学的な見地から分析すると、昭和の任侠映画や時代劇、刑事ドラマの主人公たちは、常に「体制の不条理」と「個人の美学・情義」の狭間で葛藤するアンチヒーローでした。
世界政府という巨大な権力構造の内部で、自らの信じる正義を貫こうとする赤犬、体制の欺瞞に絶望して野に下った青雉、組織の論理に冷徹に従いながらも私情に揺れる黄猿、民衆の犠牲を一切許さない藤虎――。彼らの複雑な陰影を読者に一瞬で納得させるために、昭和の銀幕を支えた名優たちの圧倒的な「顔の説得力」が必要不可欠だったのです。