今回の民法債権法改正のポイントは、単なる文言の近代化にとどまらず、これまでの判例の蓄積や取引慣行を体系的に成文化し、当事者の予測可能性と公平性を高めた点にあります。
その象徴的な一つが、意思能力を欠く状態で行われた法律行為は無効であるという基本原則の明文化です。認知症高齢者の財産管理や消費者被害の救済において、法文上の直接的な根拠が明確化されました。
また、債務不履行による損害賠償の成立要件についても、従来の曖昧な過失論から、契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の「帰責事由」があるか否かという判断枠組みへと整理されました。債務を履行できない「正当な理由」がない限り免責されない構造が明確になり、契約書作成における免責条項の緻密な設計が不可欠となっています。