窪塚愛流のキャリアにおける最大の転換点となったのが、嶽本野ばらの同名小説を実写化した映画『ハピネス』です。本作で彼は、実力派女優の蒔田彩珠と息の合ったW主演を務め、映画初主演という重責を見事に果たしました。
物語は、心臓の病により「余命1週間」を宣告された女子高生・由茉(蒔田彩珠)と、彼女から突然その事実を告げられた恋人・雪夫(窪塚愛流)の残された時間を描く純愛ストーリーです。一歩間違えればメロドラマ的な過剰演出に陥りがちな難病モノにおいて、窪塚愛流が選択したアプローチは徹底した「リアルな戸惑いと静かな受容」でした。
当時の舞台挨拶や専門誌のインタビューにおいて、窪塚愛流は「頭で芝居を組み立てるのではなく、相手の目をまっすぐ見て、そこで生まれた感情をそのまま言葉にするよう心掛けた」と語っています。彼女の残酷な告白を受け止めきれず、瞳に滲む動揺から、次第に残された日々を笑顔で満たそうと決意する覚悟への変遷は、観客だけでなく批評家からも絶賛されました。力みを感じさせないナチュラルな発声と、呼吸の間の取り方によって、観る者を物語の当事者へと引き込む求心力を証明したのです。