ネット上の掲示板やレビュー動画で「買って後悔した」「布送りができずに縫えない」と酷評される背景には、製品の初期不良だけでなく、家庭用ミシンと根本的に異なる縫製メカニズムが存在します。
一般に普及している1万〜3万円台の家庭用ミシンは、「上糸」と「下糸」の2本の糸を交差させて布の表裏をガッチリとロックする「本縫い(ロックステッチ)」を採用しています。これに対して、ダイソーなどの100均ハンドミシンは、1本の糸だけで布の裏側にループを作っていく「環縫い(チェーンステッチ)」という単糸構造を採用しています。
このチェーンステッチには、構造上以下のような決定的な特徴があります。
第一に、「縫い終わりの糸を引っ張ると、編み物のように端から全てスルスルと解けてしまう」という点です。初心者が「縫えない」と感じる最大の理由は、縫い終わった直後に裏側のループへ糸端を通す「手動の玉留め処理」を忘れていることにあります。この一手間を省くと、縫い終えた瞬間に布を引っ張っただけで縫い目が完全に消失します。
第二に、「布送り機能(送り歯)のトルク不足」です。100均ミシンはコストを極限まで抑えているため、一般的なミシンにあるような精密な金属製送り歯が備わっていません。手動式ならワンプッシュごとに、電動式でも手元の力加減で布を均等なスピードでスライドさせなければならず、布を押す力が強すぎると針が曲がり、弱すぎると同じ場所で糸が団子状に絡まります。この手先の微妙なコントロールを把握していないと、「壊れやすい」「使い物にならない」という印象に直結してしまいます。