インターネット上の掲示板やSNSでは、「一度ヒット曲を出せば印税だけで一生何もしなくても暮らせる」といったステレオタイプが語られがちです。しかし、現場の制作実態と税務の観点から見ると、実態はそれほど単純ではありません。
まず直面するのが、日本の税制における最高税率約55%(所得税45%+住民税10%)の壁です。個人で多額の報酬を受け取れば半分以上が納税に充てられます。個人事務所法人化によって法人税率(実効税率約30%台)を適用し、経費計上や内部留保を進めているとはいえ、年間で数億円単位の納税を行っていることは確実です。
さらに、スタジアム・アリーナクラスの大規模ツアーを敢行する場合、巨大なLEDスクリーンや特殊機構、数百人に及ぶツアースタッフの人件費、リハーサルスタジオ代、移動・宿泊費などの莫大な興行原価が発生します。時には「アリーナツアーを満員にしても演出にこだわりすぎて利益がほとんど残らない」という事態が起こるのがエンタメの現場です。
数字の表面だけを見れば華やかな天文学的年収ですが、その裏には膨大な制作投資リスクと極限の創作プレッシャーを一人で背負い続ける過酷な現実が存在しています。