たぬかなのキャリアを一変させたのは、2022年2月15日に行われた自宅からのライブ配信でした。Uber Eatsの配達員とのやり取りを語る中で飛び出した「背が170cmない男には人権がない」という趣旨の発言が瞬く間にSNS上で拡散。ゲーム用語としての「人権(必須キャラクターや装備を指すスラング)」という文脈を離れ、文字通りの基本的人権を否定した差別的言動として猛烈な批判を浴びることとなりました。
事態は個人の失言の枠を越え、所属していたプロeスポーツチーム「CYCLOPS athlete gaming(CAG)」の親会社やスポンサー企業を巻き込む大騒動へと発展。翌2月16日、チームは「不適切な発言および姿勢は容認できない」として、たぬかなとの選手契約を即日解除すると公式発表しました。メインスポンサーであった大手飲料メーカーやPC周辺機器メーカーも即座に公式サイトから彼女の掲載を取り下げるなど、日本のeスポーツ界において類を見ない迅速さで関係各所が事実上の追放処分を下しました。
報道各社の取材や本人が後に語った手記によると、契約解除後は実家のある徳島県へ帰郷。SNSのダイレクトメッセージには数万件規模の誹謗中傷が届き、自宅周辺への嫌がらせや、精神的支柱であった父親の急逝など、まさに筆舌に尽くしがたい絶望の淵に立たされていました。プロゲーマーとしてのキャリアは完全に断たれ、表舞台からの完全引退が確実視されていた時期でした。