現代のビジネスシーンにおける目上の人への使い方マナーを巡っては、現場で深刻な思い込みや失敗例が散見されます。大手ビジネスマナー研修機関の調査データによると、20代〜30代のビジネスパーソンのうち約24%が「社内の役員や上司に対して、丁寧なメールの結びとして『ご愛顧賜りますよう』を使用した経験がある、または使っても問題ないと思っていた」と回答しています。
しかし、これは明確なビジネスマナー違反です。「愛顧」は前述の通り、商売上の「客」が「店・商品」を愛用する行為を指します。社内の上司や役員は、業務の指導者や組織の長であっても、あなたの提供する商材を買い支える「顧客」ではありません。社内上司に対してこの言葉を使うと、「私はあなたにモノを売る店で、あなたは客なのか」というおかしな関係性を押し付けることになり、マナーを知らない人物として評価を下げてしまいます。
社内の目上の人に対して指導を仰ぎ、関係の継続を願う結びの言葉としては、「今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます」や「引き続きよろしくご教示のほどお願い申し上げます」を用いるのが唯一の正解です。
一方で、「取引先の目上の人(発注元の役員や担当部長など)」に対しては、自社がサービスや商品を提供する立場である限り、相手がどれほど高位の役職であっても「ご愛顧賜りますようお願い申し上げます」を使用して何ら問題ありません。敬意のベクトルは「個人としての序列」ではなく、「商取引における買い手と売り手の関係性」に対して向けられているためです。