音楽シーンにおいて1992年は、オリコン年間チャートでミリオンセラーが日常茶飯事となった「メガヒット時代」の幕開けでした。オリコンシングル年間ランキング1位を獲得したのは、米米CLUBの「君がいるだけで/愛してる」で、売上枚数は289万枚という驚異的な記録を樹立。フジテレビ系月9ドラマ『素顔のままで』の主題歌として社会現象を巻き起こしました。
さらに、TBS系金曜ドラマ『ずっとあなたが好きだった』の主題歌となったサザンオールスターズの「涙のキッス」、浜田省吾が1986年の名曲をドラマタイアップでリバイバルさせた「悲しみは雪のように」、平松愛理の「部屋とYシャツと私」、DREAMS COME TRUEの「決戦は金曜日」など、現在も歌い継がれる名曲が次々とミリオンを達成しました。当時は8cmシングルCDが飛ぶように売れ、テレビドラマの劇的な展開と主題歌が一体となって視聴者の感情を揺さぶる黄金の方程式が確立された年でもあります。
テレビ文化で忘れてはならないのが、前述のドラマ『ずっとあなたが好きだった』で俳優・佐野史郎が怪演したエリート銀行員「冬彦さん」の大ブームです。過干渉な母親(野際陽子)に依存し、妻(賀来千香子)に対して異常な執着と奇行を繰り返すキャラクターは視聴者を戦慄させ、「冬彦さん」は同年の新語・流行語大賞金賞を受賞しました。大衆文化が「マザコン」や家族の病理という深層心理のタブーをエンターテインメントとして消費し始めた、極めて象徴的な出来事でした。
また、100歳のご長寿姉妹としてCMやテレビで国民的アイドルとなった「きんさんぎんさん(成田きんさん・蟹江ぎんさん)」の「きんは100歳、ぎんも100歳」というフレーズは、バブル崩壊に喘ぐ日本社会に温かい笑いと癒しをもたらしました。