会場を歩けば、現在のヴィンテージアパレル・古着産業がいかに過熱しているかが肌で理解できる。ひと昔前なら数百ドルで取引されていた1940年代のワークジャケットや色褪せたバンドTシャツが、今や数千ドル、時には1万ドルを超えるプライスタグを掲げて平然と並んでいる。そのブースを取り囲むのは、東京やソウル、パリからやってきた若きバイヤーたちだ。
かつてラルフ・ローレンのデザイナーたちがインスピレーションを求めて早朝の通路を歩き回り、アーカイブピースを買い集めていた逸話は有名だが、その構図はさらに先鋭化している。単なる趣味の領域を完全に逸脱し、投資対象としてのアメリカン・ヴィンテージは、今やファインアートや高級時計と同列のオルタナティブ資産として扱われているのだ。糸のほつれや泥ジミすらも「歴史の証明」として価値に換算される異様な空間が、ここには広がっている。