ドラマ『VIVANT』で堺雅人演じる主人公が所属し、テロリスト組織を秘密裏に排除していた部隊のモデル、それこそが陸上自衛隊陸幕別班(通称・別班)です。劇中では自衛隊の最高機密部隊として描かれ、海外での武力行使すら辞さない超人的な集団として脚色されていましたが、その背骨にある「国家の危機を未然に防ぐための非公認情報組織」というコンセプトは、現実の防衛省・自衛隊の地下水脈に実在した組織構造を極めて精緻にトレースしています。
この組織の存在を白日の下に晒したのは、2013年11月に共同通信の元編集委員・石井暁氏が放った調査報道でした。同氏の取材と関係者の告白によれば、陸上幕僚監部の情報組織内に、時の内閣総理大臣や防衛大臣(当時は防衛庁長官)にすら報告を上げず、制服組(自衛官)のトップである陸上幕僚長と情報部門の極めて限られた幹部のみで直轄・運用してきた部隊が存在していました。
彼らは戸籍や自衛隊籍を形式的に抹消あるいは休職扱いとし、民間の総合商社や調査会社、シンクタンクの社員になりすます「身分ロンダリング」を実行。東京・市ヶ谷の防衛省本庁舎ではなく、都内の雑居ビルの一室に拠点を構え、偽名を使って日常業務を装いながら国内外の情報網構築に従事していました。この手口はまさに『VIVANT』で主人公が丸菱商事のエリート社員として振る舞っていた設定そのものであり、制作陣が綿密な取材に基づいてリアリティを構築していたことが伺えます。