エトの苛烈な行動原理の根底には、実父である芳村(功善)に対する深い渇望と憎悪のアンビバレンスが存在します。かつて地下組織「V」の清掃人だった芳村は、組織の粛清から幼いエトを守るため、母の形見である手帳とともに24区の地下深くに彼女を預けざるを得ませんでした。
しかし、極限の飢餓と殺戮が日常である24区の地獄を生き延びたエトにとって、その別離は「父親による身勝手な遺棄」として焼き付きました。成長したエトは「アオギリの樹」を組織し、表向きは喰種の覇権を謳いながら、あんていくを急襲して自らの実父を拘束。嘉納明博教授の狂気の人体実験に芳村を「赫包ドナー(母体)」として提供し、滝澤政道(オウル)をはじめとする多数の人工隻眼の喰種を生み出す冷徹な仕打ちを行いました。
この凄惨な所行の裏側には、単なる私怨を超えた大義が存在していました。エトの真の標的は、人間社会の治安維持組織を装いながら、裏で人間と喰種を管理・搾取し続けていた和修一族および秘密組織「V」の支配体制(=世界の鳥籠)をぶち壊すことでした。父への復讐という個人的感情と、世界規模の支配構造を粉砕するという思想が複雑に交錯した結果が「アオギリの樹」という狂気の装置だったのです。