二人の関係が修復不可能なレベルまで悪化する決定打となったのが、アルコール摂取をめぐるトラブルとそれに伴う懲戒処分でした。
温厚で口数が少ない普段の一面とは裏腹に、酒が入ると感情の抑制が利かなくなる傾向が指摘されていました。日本相撲協会のコンプライアンス委員会による調査資料や当時の報道によると、逸ノ城は部屋の女将(おかみ)さんに対して酒席で暴言を吐き、手を上げるなどの粗暴行為に及んだと認定されました。この結果、2022年12月の理事会において「1場所の出場停止処分」が下される事態へと発展します。
部屋の規則を守らず門限破りや飲酒を繰り返す弟子と、それを厳格に指導・統制しようとする師匠夫妻。両者の間には深い溝が刻まれ、逸ノ城は部屋を出て外部マンションで一人暮らしを始めるなど、事実上の別居状態に陥っていました。引退後には、部屋側から損害賠償等を求める民事訴訟が提起され、角界を揺るがす「師弟間の法廷闘争」として注目を集めることになります。
裁判は双方の主張が真っ向から対立し長期化が懸念されたものの、司法の仲介を経て最終的に和解が成立しました。法的な清算が完了したことで、双方が過去の係争に一定の区切りをつけ、それぞれの道を歩む環境が整いました。