「カメラの映像が途切れたその場所から、まるで煙のように消えてしまった」——。
これは、ある行方不明事案で現地捜索に同行した家族が、絞り出すように語った言葉です。メディアで「防犯カメラのリレー捜査」という言葉が頻繁に使われるようになり、世間には「現代の日本なら監視カメラを辿ればすぐに居場所が特定できるはずだ」という思い込みが定着しています。しかし、捜索の現実はそこまで単純ではありません。
取材班が確認した警察の追跡実務における最大の障壁は、「カメラの死角」と「民間設置機器の保存期間」です。都市部であっても、公共の街頭防犯カメラのみで個人の動線を100%捕捉することは不可能です。商業ビルや個人店舗、集合住宅のカメラ映像を回収するには、警察官が一軒ずつ足を運んで任意の提供承諾を取り付けなければなりません。さらに、民間のドライブレコーダーや小型店舗の防犯カメラは、録画データが数日から1週間程度で上書き消去されてしまう仕様が一般的です。
家族が「数日様子を見てから警察へ行こう」と判断を先送りにしてしまうと、その間に周辺の貴重な映像証拠が永久に失われてしまうことになります。また、SNS上では「〇〇で見かけた」「似た女性が男と歩いていた」といった不確かな目撃情報や、心ない憶測、生成AIを悪用した偽造画像が拡散される事態も増えています。真剣に情報を求める家族にとって、真偽不明の情報に振り回される精神的疲弊は計り知れません。情報提供を呼びかける際は、警察の指定窓口や公式発表に一本化することが極めて重要です。