2020年代以降の人類遺伝学における最大のトピックは、古代人全ゲノム解析による「日本人の起源モデル」の刷新です。
長年、日本人の祖先は「縄文人」と弥生時代に渡来した「弥生人」が混血したとする「二重構造モデル」が定説とされてきました。しかし、金沢大学や理化学研究所、鳥取大学などの国際共同研究チームが金隈遺跡(福岡県)やパジキン遺跡(富山県)などの古代人骨からDNAを高精度に抽出・解析した結果、衝撃の事実が判明しました。
古墳時代の出土人骨(古墳人)のゲノムから、縄文系や弥生系とは異なる東アジア大陸系(主に漢民族に近縁な集団)の遺伝的特徴が大量に検出されたのです。これにより、現在の学界では「縄文人」「弥生人」「古墳人(渡来系)」の3つの祖先集団が段階的に混ざり合って現代の日本人を形成したとする「三重構造モデル(トリプル祖先モデル)」が最有力仮説として確立されつつあります。
現代の本州・四国・九州に住む日本人のゲノムを解析すると、古墳人由来の遺伝的要素が約6割から7割を占めるケースも報告されています。渡来人は遠い異国の客人ではなく、生物学的にも現代日本人の直接の「祖先」そのものであることが科学的に証明されたのです。